ホリー・ジャクソン『自由研究には向かない殺人』|主人公にあっぱれと言いたくなるミステリ

読書

ホリー・ジャクソン『自由研究には向かない殺人』

服部京子訳

創元推理文庫

イギリスの地方の小さな町に住む高校生のピップは、自由研究で5年前に起きた女子高生の失踪事件について調べ始める。犯人とされているのは事件直後に自殺したサルという青年。だがサルのことを知っていたピップは彼が犯人ではないと固く信じていた。ピップは自由研究を隠れ蓑に調査を行うことでサルの無実を証明しようとする。真相が明らかになるにつれ増えていく容疑者。その中にはピップが親しい人物も含まれていて…果たしてピップは真犯人を見つけることができるのか。

主人公のピップは明るく心優しいティーンエイジャーだ。彼女は事件が起こった町に住んでいるただの高校生で、特別な捜査権限を持っているわけでもなければ事件に直接関わりがある立場でもない。

そんなピップが独自に殺人事件の真相を追う時の大きな武器となるのが明晰な頭脳と度胸のある行動力だ。

とにかくピンときたら即行動。関係者にはぐいぐいインタビューしにいくし、何か知っていそうな人物がいたらあの手この手を使って情報を聞きだす。勢い余って犯罪まがいのこともやってしまう。その分たくさん危険な目にもあうので作中何度もハラハラさせられた。それでも爽やかに信念を貫くかっこいい主人公なのだ。

とはいえここまでなら他の多くの探偵も同じかもしれない。本書の主人公が一味違うのはSNSやスマホの機能を最大限に駆使するところだろう。事件が起こったのは2012年。ピップが捜査をしているのは2017年頃という設定だが、これはまさにfacebookの全盛期にあたる。ピップは現代の高校生ならでは視点と立場を活かして当時の捜査情報などほとんどわからない不利な状況の中でも少しずつ核心にせまっていく。

集まったデータを見ながら読者もピップとともに推理している気分になれるのもこの本の楽しいポイントだ。学校の自由研究という口実で始まった調査なだけあって作中には自由研究の計画書やピップが書いたレポート風の文書、自作の地図、手に入れた記録文書などの様々なデータが登場する。だが、真犯人を読者が当てるのはちょっと難しいかもしれない。当てられた人はすごいと思う。

それはそうと、名探偵コナンの米花町並みになかなかな人物だらけの町リトル・キントン。本書はシリーズ化されており『優等生は探偵に向かない』と『卒業生には向かない真実』という2作の続編を加えた3部作になっており、さらに前日譚である『受験生は謎解きに向かない』が出版されているらしい。

本作の『自由研究には向かない殺人』だけでも大きな代償を払い、パンドラの箱を開けた感のあるピップ。次作以降もこの町が舞台になるのだとしたら…ピップ大丈夫そう?

残りの3作もぜひ読んでみたい。

ハラハラドキドキする海外ミステリを読みたい方にはおすすめの一冊だ。

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