アンデル1 小さな文芸誌 -中央公論新社 編|全集・その他|中央公論新社

さくっと読めて面白い!
普段本を読みたいけど読めないという方にこそおすすめしたい!
と思える文芸誌が誕生した、
と思ったら、復刊だったらしい。
2015年から4年間刊行していた文芸誌で、今回出版している中央公論創業140周年を迎えるにあたって特別企画でまた復活したとのこと。知らんかった…
しかも2年間限定での復刊らしい。生まれながらのレア感すごい。
最近文芸誌ブームがきているらしい。小学館のGOATの創刊が記憶に新しいがGOATはコロコロコミックくらい分厚い。500ページ以上ある。
一方この『アンデル』(中央公論社)はわずか80ページしかない。
しかもすごいのが値段だ。なんと330円。
文庫本でも700円はする時代。本屋さんを見回してもこれほど安い本を探すのは難しいのではないだろうか。
実際に読んでみたが、低価格でありながら中身はぎゅっと詰まっていると思った。見た目はシンプルだけど実は高級なクッキーのアソート缶のような感じ!読み切りの短編小説、連載小説、おやつのエッセイ、海外小説の翻訳などいろんなタイプの読み物がつまっている。
売りきれている店舗があるという情報を目にしたので、今回はkindleで購入して読んでみた。ちなみにkindleも紙と同価格だった。
電車に乗っているときの移動時間に読み始め、家でちょっとごろごろしている時間に続きを読んだ。夜に寝る前は読み終わった。半日ばかりで読める。内容も楽しいが、本を一冊読み切るとなんだか嬉しい気分になる。それも含めて楽しい読書時間だった。
さて、『アンデル1』のラインナップと感想は以下のとおり。
長編連載 朝比奈 秋『アンチエイジングクラブ東京』
外資系の保険会社に勤める彩也加が、顧客に紹介されたアンチエイジングクリニックに行く話。そのクリニックで行われている治療法は若い血液の輸血…
ブラックな内容の話だが文体がさっぱりしていてとても読みやすい。彩也加はどうなってしまうのだろうか。続きが気になる。
実は最近皮膚科のフォトフェイシャルに通い始めた私もアンチエイジングには無縁ではない。ちょっと試してみるつもりが、思った以上の効果を感じて通っている。この気持ちがエスカレートしていくとどうなっちゃうんだろう!?なんて想像が膨らんだ。
読み切り短編 石田夏穂『ノーメイク鑑定士』
主人公の私はある日部長に呼び出される。取引先からクレームが入ったのだ。内容は『営業部員の中にノーメイクの人がいるが、ビジネスの場で失礼ではないか!』というもの。普段ノーメイクの私は注意を受けたと身構えるが、上司らは別の人間を疑っていることが発覚。彼らは私がノーメイクであることに気づいていないのだ。私は上司からの頼みで部署内のノーメイクの社員を探し始める…
設定が面白すぎる。確かにメイクの有無って女性同士でも意外とわからないかも。私は主人公とは逆パターンで、1時間ほどかけて念入りにメイクをしていった日に「今日はすっぴん?」と聞かれたことがある。
私自身はメイクをすると気分が上がるタイプなので実感はなかったが、この短編を読んでハイヒールや制服のスカートと同様、化粧もまた知らず知らずのうちに社会からおしつけられている女性らしさのひとつなのかも、と気づかされた。
エッセイ 辻村深月『信玄餅』
山梨の銘菓『信玄餅』の短い思い出話。
おいしいですよねえ信玄餅。食べたくなった。挿絵も素敵。
それにしても短編と短編の合間におやつの話をいれてくるなんて!素敵!
翻訳短編 村上春樹『「オールド・マン」との午後』
主人公の少年ポール・クレメントと彼の父親(オールド・マン)の話。ある午後に父親のゴルフに付き合わされる息子のなんともいえない感情とふたりの関係性が絶妙な風合いで描かれていてすごくよかった。伝えづらいのでちょっと引用。
「そうだね」とポールは言った。そしてそれがどのような響きを有していたか、彼は一瞬にして悟った。父親がその短い一言の中に聞き取ったに違いないのは、首尾よく事は運ばなかったという響きなのだ、と。
くうう。
村上春樹の翻訳でしか味わえない読み心地がある。
エッセイ 古賀及子『つくりだしてしまう人たちのこと』
手仕事のエッセイシリーズ。編み物好きなのでとっても嬉しい。作っているときには楽しいしか考えていないけど、手仕事には物語があるなあとしみじみ。切なさもありつつ作者の優しいまなざしが感じられるエッセイだった。
町田そのこ『ひよこのいる人生』
銘菓ひよ子の話。最近食べてないなあひよこ。味が思い出せるような思い出せないような。
くすっと笑える楽しいエッセイだった。
読み切り短編 犬怪寅日子『オーリーリアの自殺人形』
『自殺人形を作りに行くんだ、お嬢さんの。そうだろ?』という強烈な出だしから始まる小説。この作品が今回この本の中で、一番純文学っぽいと思った。なんか、なにが起こっているのかよくわからないまま、するするその世界に引きずりこまれていくような読み心地。
表現をしながらも読者の期待にこたえなければならないという小説をつくる上での葛藤、創作のルールに登場人物までもが従わなければいけない苦しみを書いているように読めたがどうだろう?もっと他の解釈があるかもしれない。
ひらいめぐみ『二四九〇円の風呂椅子』
お風呂に入るときに椅子にお尻がはさまる、という笑えるところから始まるエッセイ。
わかる。風呂椅子って意外と相性がある!
コミックエッセイ 『はりーときどきぱりーへ行く』
作者がときどき行くパリで体験した出来事をツーリスト目線で描いたエッセイ。第一回のパンの話、面白かった。旅のエッセイって面白いから大好き。
詩とエッセイ 最果タヒ『美しいという名の恋』
シリーズのようで、今回は『雪の恋』という詩がのっていた。
ま、眩しい。まぶしすぎてちょっと直視できなかった。
以上です。
ぎゅぎゅっといろんな作品が詰まっていることがおわかりいただけただろうか。
純文学とエンタメどちらの作品もあって、読み易くかつ読み応えがある一冊だった。
『アンデル』はこんな人におすすめ
読んでみて思ったこと。
この本は、文学好きの人はもちろん、本を読みたいけど小説などを一冊買って読み通す自信や時間はない方にこそおすすめしたい文芸誌です。
- 低価格、低ボリュームで気楽にチャレンジしやすい
- 雑誌なので好きなところから読み始められる
- いろんなバリエーションの作品があるので、この本を通して自分の読書の好みを発見できるかもしれない
ちょっと文章を読みたいときにぴったりだし、きっと文章を読むのって楽しいなってなると思います。
ちなみにこの本、2月10日に2巻目がでている!
Kindleも大変読み易かったが、私は違いを知りたいので、次は紙で読んでみようかなと考え中。
また機会があればレビューします。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
この記事が本選びの参考になれば幸いです!



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