物語批判の哲学 〈わたしの人生〉を遊びなおすために
難波優輝
講談社現代新書
あらゆるところで「物語」がもてはやされている。私はそれが不愉快である。物語を愛しているがゆえに。
冒頭の著者の言葉に心を掴まれ読み始めた本。本屋さんの新書のコーナーで、表紙を見せるようにして棚に置かれていた。浅井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』という小説も話題になっているが「物語化・ストーリー化批判」がトレンドらしい。
年末年始にオーディション番組とかM1グランプリとか駅伝とか見ながら、大会内でのパフォーマンスだけではなくてこういうのは出場者のバックグラウンドこみで楽しむものなんだなと感じた。
YoutubeでもSNSでもショート動画ですらストーリー的な編集がされている。あらゆる製品も選択も全部なんらかのストーリーがくっついている。
そういう実感があったため、興味が湧いて手に取った本だったのだけど、
あんまりよくわかんなかったかも…
というのが正直な感想だ。著者の主張がちゃんと理解できているのかいまひとつ自信がない。
著者の問題提起と主張については大変わかりやすく共感もした。なんでも物語化しようとする行為がいかに危ういことかが説明されているのはわかった。
ただ、その根拠にあたる部分や、この本の主題としている「遊び」の類型化の話の部分でついていけなくなってしまった。
著者は「物語化」を人生の一種の「遊び方」ととらえた上で「ゲーム」「パズル」「ギャンブル」「おもちゃ遊び」といった他の遊び方の特徴の分析と批評を行っている。
その過程で、専門家の提唱する説の引用や、著者自身の造語など素人には馴染みのない言葉や概念が多く登場するのだが、その定義をいまひとつ捉えきれないまま話が展開していく。なんとか読みすすめても数ページに一回の頻度でまた新しい定義や用語が登場するため、途中で何度か心が折れかけた。
あれ?今なんの話してたんだっけ?と迷子になってしまったのだ。
私自身が哲学やトレンドやカルチャー等に疎すぎて、この本の想定されている読者ではなかったのかもしれないが、もう少し具体例を挙げて言葉の意味を解説してもらえたらありがたかった…
そんななかで、第五章「おもちゃ批判の哲学」だけは理解できた上、読んでいてはっとさせられるところがあり楽しかった。5種類ある「遊び」の1類型のように語られてはいるが、実質物語化から脱する方法のアンサーともいえる部分だったと理解している。この章があったおかげで新しい視点を得ることができた。
著者自身もには思い入れがあるようだし、もう少し詳しく知りたいので、ぜひ「おもちゃ遊び」をテーマにして次作を書いていただきたい。
この本の感想を書くにあたって、しっかり理解できていない本のことを書いていいものかどうか迷ったのだが、それも含めての読書であるという気持ちとともに、この本を読んでよかった点もいろいろあったのでやっぱり書くことにした。
まず、昨今の安易な物語化の風潮の批判から出発し、ゲームやパズル、ギャンブルにまで話を広げておもちゃ遊びに収束していく自由な展開に面白さを感じた。
また、最近流行っているカルチャーを俯瞰的に見ることができたのもよかった。
本書では推し活、2次創作、ゲームやパズルやギャンブルについて触れられている。現代の流行はあまりにも多様化かつ細分化しており、SNSはパーソナライズド表示が基本なので、自分の好みから外れたものについて触れる機会はほとんどない。
しかし、この本で扱われて批判されている分野は裏を返せば「最近みんながはまっているもの」でもある。結果として最近のトレンドを総合的に知ることができたような気がする。
この本を読んだことをきっかけに、よい物語だと感じているものとそうでもないと感じる物語との違いを自分はどこに見出しているのかということが気になりはじめた。他にも「物語」について論じた本を読んでみたい。



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